ナイアシン療法
- yamanehari770
- 14 時間前
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統合失調症に対するナイアシン療法は、オーソモレキュラー医学(分子整合栄養医学)の分野で提唱されている治療法の一つです。これは、ビタミンB3の一種であるナイアシンを大量に摂取することで、統合失調症の症状改善を目指すという考え方です。
ナイアシン療法の考え方
ナイアシン療法が統合失調症に有効であるとされる背景には、以下のようなメカニズムが提唱されています。
アドレノクロム仮説: 統合失調症の患者さんの一部では、体内でアドレナリンが酸化して「アドレノクロム」という物質が生成され、これが幻覚や幻聴などの精神症状を引き起こすと考えられています。ナイアシンは、このアドレノクロムの生成を抑制する作用があるとされています。
セロトニン合成への関与: ナイアシンは、神経伝達物質であるセロトニンの合成に必要な栄養素です。セロトニンは精神の安定に関与しており、ナイアシンがその調整に役立つ可能性があります。
炎症と酸化ストレスの抑制: 統合失調症の病態には、炎症や酸化ストレスが関与しているという説があります。ナイアシンは抗酸化作用や抗炎症作用を持つとされており、これらのバランスを整えることで症状の改善に繋がる可能性が示唆されています。
NADの生成促進: ナイアシンは体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という重要な補酵素に変換されます。NADは細胞のエネルギー代謝やDNA修復など、様々な生体機能に不可欠であり、NADの不足が統合失調症の発症や症状に影響を与える可能性が指摘されています。
血管拡張作用: ナイアシンには血管を拡張させる作用があり、これにより脳の血流改善に寄与する可能性も考えられています。
研究と臨床例
ナイアシンを用いた統合失調症の治療は、アブラム・ホッファー博士らの研究によって提唱されました。初期の研究では、ナイアシン摂取群でプラセボ群よりも有意な改善が見られたという報告もあります。特に急性期の統合失調症において効果が期待されるとされています。
また、統合失調症患者の多くで、ナイアシン摂取時に起こる皮膚の紅潮(ナイアシンフラッシュ)反応が健常者よりも鈍いことが指摘されており、これを統合失調症の診断や病態解明に役立つ「ナイアシンフラッシュ異常」として研究が進められています。
副作用と注意点
ナイアシン療法では、高用量のナイアシンを摂取することが多いため、いくつかの副作用に注意が必要です。
ナイアシンフラッシュ: 最も一般的な副作用で、ナイアシン摂取後、顔や上半身のほてり、かゆみ、発赤などが起こります。これはナイアシンの血管拡張作用によるもので、通常は一時的で、継続して摂取すると慣れて軽減されることが多いです。しかし、不快に感じる人もいます。
吐き気、嘔吐、下痢、便秘: 消化器系の症状が出ることがあります。
肝機能障害: 高用量のナイアシン、特に「ノーフラッシュ」タイプのナイアシン(イノシトールヘキサニコチネートなど)や徐放性製剤では、肝機能の数値(AST, ALT)が上昇するリスクが報告されています。そのため、定期的な肝機能検査が必要です。
血糖値の上昇: まれに血糖値が高くなることがあります。
その他: 他の薬剤との相互作用がある可能性も指摘されています。
専門家の見解と現状
統合失調症に対するナイアシン療法は、一部の医療機関や代替医療の分野で実践されていますが、標準的な精神科治療として確立されているわけではありません。大規模で質の高い臨床試験が不足していることや、効果にばらつきがあること、副作用のリスクがあることなどから、その有効性についてはまだ議論の余地があります。
多くの精神科医は、抗精神病薬を中心とした薬物療法と精神療法、リハビリテーションなどを組み合わせた治療を推奨しています。ナイアシン療法を検討する場合は、必ず専門の医師や分子整合栄養医学の知識を持つ医療従事者と相談し、慎重に進めることが重要です。自己判断での高用量摂取は避けるべきです。
まとめると、統合失調症のナイアシン療法は、特定の理論に基づいた代替医療であり、一定の臨床例で効果が報告されているものの、科学的根拠はまだ十分とは言えず、副作用のリスクもあるため、専門家の指導のもとで慎重に検討されるべき治療法です。
私はナイアシン療法を全面的に否定していませんが
専門医の指導無しで高用量のナイアシンを摂取するのはかなり危険だと思います。
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