不眠症
- yamanehari770
- 5月12日
- 読了時間: 5分
更新日:6月6日

不眠症(非器質性不眠症)
非器質性不眠症は、明らかな身体疾患や精神疾患が原因ではない不眠症を指します。以前は「原発性不眠症」とも呼ばれていました。
非器質性不眠症の原因
その根本的な原因は完全には解明されていませんが、心理的、行動的、環境的な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。主な要因としては以下のものが挙げられます。
- 心理的要因: - ストレス: 日常的なストレス、仕事や人間関係の悩み、将来への不安などが慢性的な不眠を引き起こすことがあります。 
- 心理的な緊張: 寝ようとすればするほど目が冴えてしまう、布団に入ると嫌なことを思い出してしまうなど、睡眠に対する過度な意識や緊張が不眠を悪化させます。 
- 不眠恐怖: 過去の不眠体験から「また眠れないのではないか」という強い不安や恐怖を感じ、それがさらに不眠を招く悪循環に陥ることがあります。 
- 誤った睡眠に関する信念: 「8時間寝なければならない」「少しでも眠れないと体調が悪くなる」といった非現実的な信念が、睡眠への不安を高めることがあります。 
 
- 行動的要因: - 不適切な睡眠習慣(睡眠衛生の悪化): - 不規則な就寝・起床時間 
- 寝る前のカフェインやアルコールの摂取 
- 寝る前の喫煙 
- 日中の長すぎる昼寝 
- 寝る前の激しい運動や刺激的な活動(ゲーム、スマートフォンなど) 
- 明るすぎる寝室や騒音、不適切な室温 
 
- 条件づけ: ベッドや寝室が「眠れない場所」「 不安な場所」として条件づけられてしまうことがあります。例えば、布団の中で考え事をしたり、スマートフォンを長時間使用したりすることがこれにあたります。 
 
- 環境要因: - 騒音: 周囲の騒音が気になって眠れない。 
- 光: 寝室が明るすぎる。 
- 温度・湿度: 寝室の温度や湿度が適切でない。 
- 寝具: 寝具が体に合わない。 
 
非器質性不眠症の症状
非器質性不眠症の症状は、他の不眠症と同様に、睡眠に関する問題と日中の影響に分けられます。
- 夜間の睡眠に関する症状: - 入眠困難(寝つきの悪さ): 布団に入ってから30分以上眠れない。 
- 中途覚醒: 夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けない。 
- 早朝覚醒: 希望する時間より早く目が覚めてしまい、その後眠れない。 
- 熟眠感の欠如: 睡眠時間は足りているはずなのに、ぐっすり眠った感じがしない。 
- 睡眠時間の短縮: 全体的な睡眠時間が短く、十分に休息が取れていないと感じる。 
 
- 日中の影響: - 疲労感・倦怠感: 慢性的な疲れが取れない。 
- 集中力・注意力の低下: 仕事や勉強に集中できない、ミスが増える。 
- 意欲の低下: 何をするにも億劫に感じる。 
- 気分の落ち込み・イライラ: 感情のコントロールが難しくなる。 
- 日中の眠気: 強い眠気を感じることがある。 
- 頭痛・めまい: 体調不良を感じることがある。 
- 社会生活への支障: 仕事や学業、人間関係に悪影響が出る。 
 
これらの症状が慢性的に続く場合、非器質性不眠症の可能性が考えられます。自己判断せずに、睡眠専門医や心療内科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
鍼灸療法
非器質性不眠症に対する鍼灸治療は、症状の緩和や睡眠の質の改善に効果が期待できるとされています。
鍼灸治療が非器質性不眠症に有効と考えられるメカニズム
東洋医学では、不眠は心身のバランスの乱れ、特に気・血・津液(体内の水分)の不足や滞り、五臓六腑の機能失調などが原因と考えられます。鍼灸治療は、これらのバランスを整え、自然治癒力を高めることで不眠の改善を目指します。
西洋医学的な観点からも、鍼灸の以下のような作用が不眠に効果をもたらすと考えられています。
- 自律神経の調整: 鍼灸刺激は、交感神経の興奮を抑え、副交感神経を優位にすることで、心身のリラックスを促し、入眠をスムーズにする効果が期待できます。 
- 脳内血流の改善: 頭部や首のツボへの刺激は、脳の血流を促進し、精神的な緊張を和らげ、睡眠を促す可能性があります。 
- ホルモンバランスの調整: 鍼灸治療は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促すなど、ホルモンバランスを整える作用があると考えられています。 
- 筋肉の緩和: 首や肩などの筋肉の緊張は、睡眠の妨げになることがあります。鍼灸治療は、これらの筋肉の緊張を緩和し、リラックス効果を高めます。 
- 痛みの軽減: 慢性的な痛みは不眠の原因となることがあります。鍼灸治療による鎮痛効果が、睡眠の改善につながる場合があります。 
非器質性不眠症に対する鍼灸治療
鍼灸院では、患者さんの体質や症状、不眠のタイプなどを詳しく問診し、脈診や舌診などの東洋医学的な診断に基づいて治療方針を決定します。
治療では、主に以下のようなツボが用いられることがあります。
- 安眠(あんみん): 後頭部にある、精神安定作用のある代表的なツボです。 
- 失眠(しつみん): かかとにある、精神的な興奮を鎮めるツボとされています。 
- 百会(ひゃくえ): 頭の頂点にある、自律神経を整える重要なツボです。 
- 神門(しんもん): 手首にある、精神安定作用のあるツボです。 
- 内関(ないかん): 手首にある、精神安定や吐き気止めにも用いられるツボです。 
- 三陰交(さんいんこう): 内くるぶしの上にある、ホルモンバランスを整えるツボとしても知られています。 
これらのツボを中心に、患者さんの状態に合わせて全身のツボを組み合わせて鍼やお灸で刺激します。
治療効果と注意点
鍼灸治療の効果には個人差があり、すぐに効果を実感できる方もいれば、数回の治療を重ねるうちに徐々に効果が現れる方もいます。
非器質性不眠症の場合、生活習慣の改善(睡眠衛生の指導)と並行して鍼灸治療を行うことで、より効果が期待できます。
もしあなたが非器質性不眠症でお悩みでしたら、鍼灸治療を検討するのも一つの選択肢となるでしょう。






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